本の記録
読書感想文。
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横道世之介
03月 02日 * 23:12 * 吉田 修一 *
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横道世之介という名前が変わってることだけが取り柄な青年が、大学入学を期に状況してきてから1年間の暮らしを綴った小説です。彼は名前だけが取り柄というだけに特に派手でもなく、大学デビューするわけでもなく、なんとなく冴えない大学生活を営んでいる。

なんという事もない小説のようだけれど、世之介の大学時代は実は過去の話。
時代背景からすると、私の少し上の世代。世之介が状況してきた東京は、バブル真っ盛りで皆がちょっと浮かれているようなそんな時代。あの時代ってちょっと恥ずかしい。なんでだかわかんないけど恥ずかしい。
自分はバブルの頃は中学生で、高校に入ってすぐにバブルはパァンとはじけたわけです。
子供時代に見ていた大人の世界がバブルだったわけで。
なんで恥ずかしい気持ちになるんだろうなあ。

話がずれた。
お話は現在に飛びつつ世之介が必死で暮らす大学時代に戻りつつして進みます。
大学1年の世之介が関わった人たち、それぞれがそれぞれの道を生きながら、ふと世之介のことを思い出す。
ふと思い出されたその現代で、一体世之介は何をしているんだろう……と、当然のように思いながら読み進めると途中でなんかすごい裏切られ方するのだけれど、それがまたこの作品を味わい深くしている。

いやまさか悪人を書いた人だったとは驚きでした。が、言われてみればスタイル一緒だった。
神の目みたいな視点で物語を綴っていく形。書き手は世之介ではなく、他のどの登場人物でもない。目の前で動いている世之介をスケッチしているような。その距離感がまた、この物語にぴったりとハマっておりました。

世之介をめぐる人たちの20年をまたいだ群像劇みたいな趣だけれど、そこから世之介の本人が全く気づいていなかった魅力が浮き上がる。うまく言葉に出来ないのだけれど、彼の持っていた魅力はゆるい許容みたいなものなのだと思う。
本人の自覚なしに振りまいていたゆるいゆるい許容みたいなものが、
物語の前編に振りまかれている。

最後の章の母親の手紙でその辺がどばっと溢れて、私の涙腺を緩ませまくったのでした。




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