本の記録
読書感想文。
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月と蟹
08月 22日 * 00:56 * 道尾 秀介 *
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道尾秀介の小学生小説。
小学生が主人公の小説です。
子供の小説を描いたことがない、と、何かのインタビューで言っておられましたが、
私結構道尾秀介は子供を描いている印象があってちょっと意外。

向日葵の咲かない夏なんかも主人公は子供だった気がする、が、あれはまた特殊なのかな。

どうにもこうにも息苦しい思いを抱えて生きている小学校5年生の3人の子どもたち。
小学校5年生って一つの節目だと思います。
その辺りから思春期に突入する雰囲気。
ものすごく微妙な年齢です。5年生。

生きている人も死んでいる人も、10歳ってのがひとつの節目だと言われるそうです。
10歳までは片時も親のそばを離れられないのだけれど、10歳になるととりあえず一人立ちする、と。
親離れ子離れって色々な段階があると思うのですが、わかりやすく一歩踏み出すのがこの10歳っていう年齢なのじゃないかな。
小学校5年生は10歳〜11歳の子どもです。

親の人間らしい面が見えてきたり気づいたりし始める年頃。

私は子どもが自由だなんて絶対に信じていないし、親に扶養されていなければ生きていけない子どもという時代はものすごく窮屈な時代だと思っています。
少なくとも私は、子ども時代に自由を感じたことはありませんでした。
自由ではないということが理解出来ていなかっただけで、子どもの時代のことを思い出せば、今でもとても窮屈で息苦しい気持ちでいっぱいになります。

声を出して笑うということがこんなに気持ちいいのか!っていう発見をしたのが小学校6年の頃です。
それまで何かを見て声を上げて笑うってことをしたことがなかったんだと思う。
今でも忘れません。マネーピットっていう映画のビデオを見て、アホみたいに爆笑したのでした。
あれから私は少し変わったな……。

私のことは置いておいて、この小説に出てくる子どもたちは私が子どもの頃に抱えていた窮屈さや息苦しさを目一杯感じているし背負っている。子どもっていうのは無力で、そういう環境から抜け出したいと思ったって自分だけではどうにもならないのです。

自分にとってかけがえのない、特別な存在である母親の女の一面を見てしまった時から主人公の息苦しさは炸裂します。よくそこまで頑張ったよあんた……と思う気持ちと、お母さんだって一人の人間なのだから……という気持ちがぐちゃぐちゃしたのは、私が女だからなのかもしれない。母親の恋愛相手である男性は、同級生の女の子の父親で、同級生の女の子はその辺のことをきちんと受け止めているのだから。面白くないけれどもお父さんのことを考えたら……という、オトナの考え方をする。これは男の子と女の子の差だろうなあと思うわけです。

当然、かなりの個人差がありますから、誰でもがそうだというわけではないですが。

父親から虐待を受けている主人公の親友も本当に呼吸できなくなるよ!っていうくらいしんどい暮らしをしている。

彼らはなんとかその日常に溺れないように、自分自身を保つために、必死になる。
主人公が一度溺れかけるその、暗くて黒い世界。

全体的に素晴らしく丁寧に描かれていて、苦しくなりながらも一気に読んでしまいました。

子どもならではの残虐なシーンはいくつかありますので、苦手な人は本当にだめかもしれません。

私は今オトナで、自由を満喫しているけれど、私の子どもたちにとったらこの生活も大概窮屈だと思う。
そんな中で心も折らずに成長してくれていることに安堵したり感謝したりしているのでした。

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